「医学生と研修医って、何が違うの?」「医学部6年生のあと、研修医になるまでどんな流れなの?」——医学生や受験生のみなさんは、こんな疑問を持っているのではないでしょうか。
結論から言うと、医学生と研修医のいちばんの違いは「医師免許を持っているかどうか」です。研修医は、医師国家試験に合格して医師免許を取ったあと、2年間の初期研修(臨床研修)でいろいろな科を回りながら修行中の「1年目・2年目のお医者さん」です。
免許があるので、研修医は上級医の先生の指導のもと、カルテを書き、薬を処方し、処置を行うなど、実際に診療に加わります。学費を払う側から、給料をもらう側に変わるのも大きな違いです。
この記事では、地方国公立医学部を卒業し、現在は地方の市中病院で研修医1年目として働いている私が、医学生と研修医の違い・研修制度と研修期間・医学部6年から研修医になるまでの流れ・研修先の決まり方を、実体験と公的な資料をもとに解説します。

医学部6年生と研修医1年目は、たった1年の差。でも中身は「進化前」と「進化後」くらい違います。ただし、進化してもレベル1からのスタートです(笑)
研修医とは?医学生との違いを一言でいうと
研修医とは「医師免許を持った修行中のお医者さん」
研修医とは、医師国家試験に合格して医師免許を取ったあと、臨床研修を受けている医師のことです。医師法では、診療に従事しようとする医師は、2年以上の臨床研修を受けなければならないと定められています(医師法第16条の2)。
つまり、研修医は「医学生の延長」ではなく、法律上はれっきとした医師です。ただし、まだ一人で何でもできる段階ではないので、上級医(指導医)の先生のもとで、基本的な診療の力を身につけていきます。
医学生と研修医の違い一覧
まずは、医学生と研修医の違いを表でざっくりまとめます。
| 医学生(5・6年生) | 研修医(初期研修医) | |
|---|---|---|
| 立場 | 大学の学生 | 医師(病院の職員) |
| 医師免許 | なし | あり |
| 病院での活動 | 臨床実習(ポリクリ・クリクラ) | 臨床研修(初期研修) |
| できること | 指導医の監督のもとで一定の範囲の医行為・見学が中心 | 上級医の指導のもとでカルテ記載・処方・処置など |
| お金 | 学費を払う | 給料をもらう |
| 期間 | 医学部6年間 | 卒業後2年間 |
| どこで | 主に自分の大学病院(学外実習もあり) | マッチングで決まった研修病院 |

医学生は「病院で学ばせてもらう学生」、研修医は「病院で働きながら学ぶ医師」。お客さん側から、チームの一員(見習い)側に変わるイメージです。
医学生と研修医の違い5つ【研修医1年目の実感】
ここからは、医学生と研修医の違いを5つに分けて、研修医1年目の私の実感も交えながら説明します。
- 医師免許があるかどうか
- 病院でできること
- お金(学費を払う側→給料をもらう側)
- 責任の重さ
- 研修期間と場所
違い①医師免許があるかどうか
いちばん大きな違いは、やはり医師免許です。医学部を卒業しただけでは医師にはなれず、医師国家試験に合格して、厚生労働大臣の免許を受けることで医師になります(医師法第2条)。
医学部6年生は、どれだけ勉強していても、まだ「学生」です。国試に合格して医師免許を取り、4月から研修医として働き始めた瞬間に、立場がガラッと変わります。
違い②病院でできること
医学生も、5・6年生になると病院で臨床実習(ポリクリ・クリクラ)を行います。2021年の医師法改正で、共用試験(CBT・OSCE)に合格した医学生は、臨床実習において医業をすることができると法律に位置づけられました(令和5年4月1日施行)。とはいえ、あくまで指導医の監督のもとで、実習として行う範囲です。
一方で研修医は、医師として実際の診療に加わります。私の場合は、基本的に上級医の先生について、カルテの記載や薬の処方、処置を行ったり、見学したりしています。
「処方する」「カルテを書く」というのは、医学生のころには遠い世界の話でした。研修医になると、それが毎日の仕事になります。もちろん、上級医の先生が確認してくれるので、一人で全部を決めるわけではありません。
研修医になって一番変わったと感じるのは、患者さんに侵襲を加える(体に針を刺したり、薬を入れたりする)機会があることです。実習でも処置をさせてもらえることはあると思いますが、研修医になると、処方や処置が「経験のための体験」ではなく「患者さんの治療そのもの」になります。

医学生は「観客席」、研修医は「ベンチ入りした新人選手」。試合に出してもらえるけど、監督(上級医)がしっかり見守ってくれている、そんな感じです。
違い③お金(学費を払う側→給料をもらう側)
医学生は、大学に学費を払って学ぶ立場です。研修医になると、病院の職員として給料をもらいながら研修を受ける立場になります。
研修医の給料や手当、当直の扱いは、病院によってかなり差があります。研修先を選ぶときは、各病院の募集要項(処遇)を必ず確認してください。ちなみに私が市中病院を選んだ理由のひとつも、「大学病院より給料がよかったこと」でした。
違い④責任の重さ
研修医は医師なので、自分が書いたカルテや出した処方には、医師としての責任がともないます。医学生のころの「勉強のための実習」とは、気持ちの重さが違います。
ただ、これは重いだけではありません。自分のやることが患者さんに影響を与えるからこそ、責任感を持って仕事をしている感覚があり、やりがいを感じられます。医学生のころには味わえなかった感覚です。
ただ、私も研修医になる前は「人の命を預かるなんて、本当にできるのだろうか」と不安でしたが、実際に働いてみると、たくさんの先生方が支えてくれて、仲間と協力しながら働ける環境でした。自分のミスも上の先生方がカバーしてくれるので、「全部を一人で背負う」わけではありません。
違い⑤研修期間と場所
医学生は医学部の6年間、主に自分の大学病院で実習をします。研修医は、卒業後の2年間、マッチングで決まった研修病院で研修します。出身大学の大学病院で研修する人もいれば、私のように地域の市中病院で研修する人もいます。

学費を払う側から、給料をもらう側へ。研修医になったことを一番わかりやすく実感できるのは、もしかすると通帳かもしれません(笑)
研修医の研修制度と研修期間
初期研修の研修期間は2年間
医師の臨床研修(初期研修)は、平成16年4月から必修化された制度です。研修期間は原則として2年間以上で、厚生労働省の指定を受けた臨床研修病院(大学病院を含む)で行います。
臨床研修の目的は、厚生労働省の省令で次のように定められています。
臨床研修は、医師が、医師としての人格をかん養し、将来専門とする分野にかかわらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身に付けることのできるものでなければならない。
出典:厚生労働省「臨床研修の到達目標、方略及び評価」(臨床研修の基本理念)
かんたんに言うと、将来何科に進むとしても、よくある病気やケガに対応できる基本の力をつける2年間です。
必修科目と期間(ローテーション)
研修医は、いろいろな診療科を数週間〜数か月ごとに回ります。これを「ローテーション(ローテ)」と呼びます。厚生労働省が定める必修分野と期間は、次のとおりです。
| 必修分野 | 期間(原則) |
|---|---|
| 内科 | 24週以上 |
| 救急 | 12週以上(麻酔科での研修を4週まで含められる) |
| 外科 | 4週以上(8週以上が望ましい) |
| 小児科 | 4週以上(8週以上が望ましい) |
| 産婦人科 | 4週以上(8週以上が望ましい) |
| 精神科 | 4週以上(8週以上が望ましい) |
| 地域医療 | 4週以上(8週以上が望ましい・原則2年次) |
| 一般外来 | 4週以上(8週以上が望ましい) |
必修以外の期間は「選択研修」として、自分の興味のある科や将来進みたい科を選べるのが一般的です。どの科を何週間回るかは、病院ごとのプログラムで決まっています。
研修医の到達目標と評価
研修医は、2年間で「経験すべき症候(29症候)」と「経験すべき疾病・病態(26疾病・病態)」を経験し、病歴要約(レポート)を書くことが求められます。各科のローテーションが終わるごとに、医師や看護師などから評価を受け、2年間の研修終了時に到達目標を達成できたかが判定されます。
医学生のときはテスト(CBT・卒試・国試)で評価されましたが、研修医は日々の働きぶりそのものが評価されるという違いがあります。
初期研修のあとは専攻医(後期研修)へ
2年間の初期研修を修了すると、多くの人は専門の診療科を選び、「専攻医」として専門研修(後期研修)に進みます。ここでようやく「〇〇科のお医者さん」としてのキャリアが本格的に始まります。

1〜2か月ごとに科が変わるので、気分はずっと「転校生」。やっと病棟の場所と先生の顔を覚えたころに、次の科へ転校です。
医学部6年から研修医になるまでの流れ
「医学部6年生から研修医になるまで、どんなステップがあるの?」という人のために、医学生から研修医になるまでの流れを時系列でまとめます。
- 4年生ごろ:共用試験(CBT・OSCE)に合格する
- 5〜6年生:臨床実習(ポリクリ・クリクラ)をしながら、病院見学に行く
- 6年生の夏:研修病院の採用試験・面接を受け、マッチングに希望順位を登録する
- 6年生の10月ごろ:マッチングの結果が出て、研修先が決まる
- 6年生の冬:卒業試験を受ける
- 2月:医師国家試験を受ける
- 3月:合格発表・卒業、医師免許の申請
- 4月:研修医(初期研修)として働き始める
なお、共用試験の合格は、令和7年4月1日から医師国家試験の受験資格の要件にもなっています。4年生ごろの共用試験は、研修医への最初の大きな関門です。
医学生の研修先はマッチングで決まる
医学生の研修先(研修病院)は、「マッチング」という仕組みで決まります。医学生は行きたい病院の希望順位を、病院は採りたい学生の希望順位を登録し、その結果をもとに組み合わせが決まります。
私がマッチングで大切だと感じたのは、CBTの成績・病院の採用試験・面接です。研修先選びで迷っている人は、5年生のうちから病院見学に行って、研修医の先生の雰囲気を見ておくのがおすすめです。
医学部6年生と研修医1年目は「1年違い」でも別世界
医学部6年生の1年間は、マッチング・卒業試験・国家試験と、イベントが続く1年です。そして国試が終わってわずか2か月後には、研修医として病院で働いています。
「6年生の3月まで学生、4月からいきなり医師」という切り替わりは、思っていた以上に急です。だからこそ、6年生のうちに研修先の病院や研修制度について知っておくと、4月からのスタートがぐっと楽になると思います。
研修医1年目のリアル【地方の市中病院の場合】
ここからは、私が実際に研修医1年目として働いている病院の様子を紹介します。病院によって研修の中身はかなり違うので、「こんな病院もあるんだな」という一例として読んでください。
私の研修病院はこんなところ
- 地方都市にある、中〜大規模の急性期の市中病院
- 病床数は約600床
- 2次救急を担う病院
- 初期研修医は20人程度と多め
研修医が多い病院なので、同期や先輩研修医と相談しながら働けるのが心強いところです。病院選びの記事でも書きましたが、研修医の人数が少なすぎる病院は、合わない人がいたときに逃げ場がないので、人数は大事なポイントだと思います。
ローテーションは1〜2か月ごと
私の病院では、各科を1か月〜2か月ごとくらいでローテーションしています。1年目は内科を半年ほど回り、そのほかに救急・麻酔科・外科・小児科・産婦人科・精神科などの必修科を回ります。2年目は地域医療などを除き、将来進みたい科を中心に自由に選べるプログラムです。
また、科のローテーションとは別に、数日に一度、救急の当直に入ります。救急で初期対応を経験できる大事な機会です(救急当直の中身は、このあと詳しく紹介します)。
研修医の仕事:上級医について「やる」と「見る」
研修医の毎日の仕事は、基本的に上級医の先生について、カルテの記載や薬剤の処方、処置を行ったり、見学したりすることです。
- カルテの記載(診察した内容や、検査結果・治療方針を書く)
- 薬剤の処方(上級医と相談しながら)
- 処置(自分でやらせてもらうもの・見学するもの)
- 救急当直での初期対応
医学生のときに「見ていたこと」を、研修医になると「自分の手でやる」ようになります。最初は時間がかかりますが、上級医の先生が確認してくれるので、安心して失敗できる環境があるのはありがたいところです。
研修医の1日の流れは回る科によって違う
「研修医の1日って、何時から何をしているの?」とよく聞かれますが、1日の流れは回っている科によってかなり違います。共通しているのは、次のような予定が1日の中に組み込まれていることです。
- 朝や夕方のカンファレンス(患者さんの経過や治療方針を話し合う)
- 回診(担当の患者さんの様子を見て回る)
- 勉強会(研修医向けのレクチャーなど)
- そのあいだに、カルテの記載・処方・処置などの病棟業務
科が変わると、朝の始まる時間もカンファの回数も変わります。1〜2か月ごとに、その科のリズムに体を慣らしていく感じです。
救急当直では「ファーストタッチ」から方針まで考える
研修医らしさを一番感じるのが、救急の当直です。私は数日に一度当直に入っていますが、救急では研修医が最初に患者さんを診る「ファーストタッチ」を担当します。
- 問診・診察をする
- どんな検査をオーダーするか考える
- 何科にコンサルト(相談)するか考える
- 救急科で入院とするかなど、方針を決める
この流れを、自分で考えて決められるのが研修医の救急です。もちろん、わからないことは上級医の先生に質問できますし、わからないことは必ず質問しないといけません。一人で抱え込まずに相談するのも、研修医の大事な仕事です。

救急や当直の体制(回数、研修医がどこまで担当するか)は、病院によって大きく違います。気になる人は、病院見学のときに研修医の先生に直接聞いてみてください。
最初は「わからないことだらけ」でも大丈夫
正直に言うと、研修医になったばかりのころは、何もかもが初めてで、わからないことだらけでした。「本当にやっていけるのかな」と心配になったこともあります。
それでも、やれることを一生懸命やって、いただいた機会で一つずつ経験を積んでいくうちに、「これならやっていけそうだ」と思えるようになってきています。今まさに不安を感じている医学部6年生の人にも、「最初はみんなわからないことだらけ」ということは伝えたいです。

研修医は、上級医の先生の後ろをついて回るヒヨコです。ピヨピヨしながらも、少しずつ「自分でできること」が増えていくのが研修医のおもしろさです。
市中病院を研修先に選んだ理由
私が大学病院ではなく市中病院を研修先に選んだ理由は、次の3つです。
- 大学病院より、給料がよかった
- 実践的で、いろいろとやらせてもらえるところが多そうだった
- コモンな病気(よくある病気)の症例が多く来ると思った
大学病院と市中病院のどちらが正解ということはありません。自分が何を重視するか(症例の多さ、研修の自由度、将来の診療科、働く地域など)で選ぶのがよいと思います。
医学生と研修医の違いに関するよくある質問
Q. 医学部6年生は研修医ですか?
A. いいえ。医学部6年生はまだ医学生です。国家試験に合格して医師免許を取り、卒業後の4月から研修医になります。
Q. 研修医も「医者」なの?
A. はい。研修医は医師免許を持った医師です。ただし、診療に従事するには2年以上の臨床研修が必要なので、その期間を「研修医」と呼んでいます。
Q. 医学生の「研修」と研修医の「研修」は違う?
A. 違います。医学生が病院で学ぶのは「臨床実習(ポリクリ・クリクラ)」で、大学の授業の一部です。研修医の「臨床研修」は、医師免許を取ったあとに、医師法で定められた2年間の研修です。また、医学生が研修先を探すために病院へ行く「病院見学」も、研修医になる前の大切なステップです。
Q. 研修先は大学病院と市中病院どっちがいい?
A. どちらにもよさがあります。私は、給料・実践的な研修・コモンな症例の多さを重視して市中病院を選びました。実際に病院見学に行って、研修医の先生の雰囲気を見るのが一番確実です。
Q. 地域枠の医学生も、同じように研修医になる?
A. 基本的な流れは同じですが、研修先や勤務先に地域の指定がある場合があります。契約の内容は必ず確認してください。
まとめ:医学生と研修医の違いは「医師免許」
- 医学生と研修医のいちばんの違いは、医師免許があるかどうか
- 研修医は、上級医の指導のもとでカルテ記載・処方・処置などを行う「修行中の医師」
- 医学生は学費を払う側、研修医は給料をもらう側
- 初期研修の研修期間は原則2年間。内科24週以上・救急12週以上など必修科目がある
- 医学部6年生→国家試験→医師免許→4月から研修医、という流れ
- 医学生の研修先は、マッチングで決まる
- 研修医の救急当直では、ファーストタッチから検査・コンサル・方針まで自分で考える(わからないことは上級医に質問)
- 研修医は、先生方や仲間に支えられて「安心して失敗できる」環境で学べる
医学生と研修医は、1年しか違わなくても、立場もやることも大きく変わります。それでも、一つずつステップを進めば大丈夫です。この記事が、研修医になる前の医学生・医学部を目指す受験生の参考になればうれしいです。



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