「医学部を卒業したあとって、具体的に何をするの?」「医者になるまでに、どんな流れがあるの?」——医学部に入ったばかりの人や、受験生のみなさんは、こんな疑問を持っているのではないでしょうか。
結論から言うと、医学部を卒業したあとは、医師国家試験に合格して医師免許を取り、「臨床研修(初期研修)」で2年間、研修医として働くのが基本の流れです。就職先(研修先)は、「マッチング」という仕組みで、卒業前に決まります。
私のいる地方国公立医学部では、ほとんどの人、ほぼ100%の人が、卒業後に研修医になります。そのあとは、専門の診療科を選んで「専攻医」として働くのが一般的です。
この記事では、地方国公立医学部を卒業し、現在は市中病院で研修医1年目として働いている私が、医学部卒業後の流れ・医学生の就活(マッチング)・卒業前後にやること・就職先や進路を、実体験と公的なデータをもとに解説します。

「医学部に入れば医者になれる」と思いがちですが、入ったあとにも、実はイベントが盛りだくさんです。ゲームでいう、クリア後のダンジョンみたいなものですね。全体像をつかんでおきましょう!
医学部を卒業した後の流れは?
医学部に入った後〜研修医までの流れ
まず、卒業前後の大まかな流れです。
- 4年生ごろ:共用試験(CBT・OSCE)に合格する
- 5〜6年生:臨床実習(ポリクリ)をしながら、病院見学・就活(マッチング)を進める
- 6年生の秋:マッチングの結果が出て、研修先が内定する
- 6年生の冬:卒業試験を受ける
- 2月:医師国家試験を受ける
- 3月:国家試験の合格発表・卒業
- 合格後:医師免許を申請して、医師免許証を受け取る
- 4月:研修医(初期研修)として働き始める
国家試験を受けるには、大学で医学の正規の課程を修めて卒業していること(共用試験に合格した者に限る)が必要です(医師法第11条)。そして、医師になるには、国家試験に合格して、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります(医師法第2条)。
免許取得後もすぐ一人前ではない
国家試験に合格して医師免許を取ると、法律上は「医師」になります。ただ、診療に従事しようとする医師は、2年以上の臨床研修を受けなければならないと定められています(医師法第16条の2)。つまり、卒業後の最初の2年間は、研修医として、いろいろな科を回りながら基本的な診療能力を身につける期間です。
研修医のその後は専攻医→専門医
初期研修が終わると、多くの人は、専門の診療科を選んで「専攻医」として専門研修に進みます。研修の期間は、プログラムによって異なります。
医学生の就活とは?マッチングの流れ
「医学部を出たあとの就職先は、どうやって決まるの?」という疑問に答えるのが、この章です。普通の学生は、企業にエントリーして、面接を受けて、内定をもらいますよね。医学生の就活は、少し仕組みが違います。
医学生のマッチングとは?
研修医マッチングは、研修を受けたい医学生と、研修病院のプログラムを、お互いの希望をもとに、コンピュータが一定のルールで組み合わせて決める仕組みです。平成16年度に医師の臨床研修が義務化されたことにあわせて導入されました。
流れとしては、学生は「行きたい病院の希望順位」を登録し、病院も「採りたい学生の希望順位」を登録します。その結果をもとに、組み合わせが決まります。
マッチングの数字【令和7年度】
厚生労働省の発表では、令和7年度(令和8年度から研修開始)のマッチングは、希望順位を登録した9,651人のうち8,910人が内定し、内定率は92.3%でした。結果の公表は令和7年10月23日です。
私のマッチングの体験談
私がマッチしたのは、中くらいの人気の病院です。毎年フルマッチ(定員が埋まる)で、第一志望にしていても落ちる人がいるくらいの、ちょうど真ん中あたりの病院でした。
実際にやってみて感じたのは、マッチングで大切なのはCBTの成績・病院の採用試験・面接だということです。英語資格は、私の志望した病院ではまったく影響しませんでした。
病院見学は4・5年生は幅広く、6年生は絞る
病院見学は、時期によってやり方を変えました。4・5年生のうちは、大人気の病院から地元の病院まで幅広く見て回り(合計7〜8か所)、6年生になってからは、受ける病院に絞って見学に行きました(受験する病院は3回ずつ)。
志望病院を決めるときに大切だと思ったポイントは、
②研修医の人数は少なすぎないか
③給料は十分
④ハイパー病院かハイポ病院か
の4つです。そして、受ける病院は、できれば6年生になる前に決めておくのがおすすめです。直前まで迷っていると、他人の意見や周りの動向に振り回されてしまいます。

医学生の就活は、「内定」というより「お見合い」に近いです。お互いの希望順位をAIが突き合わせて、最終結果を一斉にバーン!と発表される、ドキドキのイベントです。
大学病院と市中病院どっちを選ぶ?
研修先は、大きく分けて「大学病院」と「市中病院(大学病院以外の一般病院)」があります。私は、市中病院で研修医1年目として働いています。
どちらが正解ということはなく、自分が何を重視するか(症例の多さ、研修の自由度、将来の診療科、働く地域など)で決めるのがよいと思います。実際に病院見学で、研修医の先生の雰囲気を見るのが一番確実です。
私が市中病院を選んだ理由は、次の3つです。
- 大学病院より、給料がよかった
- 大学病院より、実践的で、いろいろとやらせてもらえるところが多そうだった
- コモンな病気(よくある病気)の症例が多く来ると思った
大学病院で見るような難しい症例ではなく、もっとコモンな症例が来やすいので、医者としての基本を身につけやすいと考えました。大学病院と市中病院のどちらが優れているということではなく、あくまで私の選んだ理由です。
医学部を卒業したらやること一覧
「卒業したら、結局なにをすればいいの?」という人のために、卒業前後にやることを時系列で整理します。ここを読めば、やり忘れを防げます。
- 卒業試験に合格する
- 医師国家試験を受験し、自己採点をする
- 合格発表を確認する
- 研修先の病院に連絡する
- 医師免許を申請する(住民票のある地域の保健所)
- 引っ越しなど、研修先の手続きを済ませる
- 4月から、研修医として働き始める
①卒業試験・国家試験に合格する
まず、卒業試験と国家試験が最大の関門です。第120回医師国家試験(令和8年2月7日・8日実施)の結果は、受験者9,980人のうち合格者は9,139人で、合格率は91.6%でした。新卒に限ると、受験者9,205人のうち合格者は8,716人で、合格率は94.7%です。
数字だけ見ると高めですが、受験者全体で約841人(計算値)、新卒でも約489人(計算値)が不合格になっています。私の同期でも、体感で10人くらいが国試で不合格になっていました(私の記憶に基づく目安です)。

合格率9割超でも、「自分は残りの1割になるかも…」と思ってしまうのが国試前の不思議なところです。数字は安心材料。でも、油断はしないのが一番ですね。
②合格したら、医師免許を申請する
国家試験に合格しても、自動的に医師免許がもらえるわけではありません。医師免許は、国家試験に合格した人の申請により、医籍に登録することで与えられます(医師法第6条)。厚生労働大臣は、免許を与えたときは、医師免許証を交付します。
私は、保健所に行って、言われたとおりに手続きをしました。準備したものは次のとおりです。
- 住民票の写し(または戸籍謄本)
- 収入印紙60,000円分(郵便局で購入)
- 医師免許申請書
- 健康診断書
- 登録済証明書用のハガキ
国試が終わったら、できるだけ早く手続きをした方がいいと思います。
必要書類や申請先は、自治体や年度によって細かい点が異なる場合があります。申請の前に、住民票のある地域の保健所のホームページや窓口で確認してください。
③研修先の手続きと引っ越し
4月から働くために、研修先の病院から、書類の提出や説明会の案内などが届きます。
私が卒業前後にやったことは、次のとおりです。
- 引っ越し
- 国家試験が終わったら、自己採点(Amazonギフトなどがもらえるサービスもあります)
- 国家試験に合格したら、まずは自分の研修先へ連絡
- 住民票のある保健所へ、医師免許の申請に必要な書類を出しに行く
④4月から研修医スタート
そして、4月から初期研修が始まります。ここからが、ようやく「医者の人生のスタート」です。
医学部卒業後の研修医1年目の体験談
初期研修は2年間で各科を回る
臨床研修では、厚生労働省が定めた必修科目として、内科・救急・外科・小児科・産婦人科・精神科・地域医療などを回ります。これに加えて、自由に選べる科の研修もあります。
研修医になる前の不安と実際
私も、医者になる前は、「こんなにたくさんのことを覚えて、人の命を預かるなんて、本当にできるのだろうか」と考えていました。
ただ、実際に研修医として働いてみると、たくさんの先生方が支えてくれて、仲間と協力し、切磋琢磨しながら働けるので、そこまで気負う必要はありませんでした。自分のミスも上の先生方がカバーしてくれるため、安心して失敗できる環境があります。
もちろん病院や科によって環境は違うと思いますが、「全部を一人で背負う」わけではない、という点は、不安に感じている人に伝えたいことです。
医学部卒業後の進路・就職先は?
最後に、卒業後の進路の全体像です。
約95%は病院・診療所で働く
厚生労働省の統計(令和6年12月31日現在)では、届出医師347,772人のうち、医療施設(病院・診療所)で働く医師は331,092人(95.2%)でした。私の大学でも、ほぼ100%の人が卒業後に研修医になります。
医学生の進路・医学部卒の就職先
- 病院勤務医(大学病院・市中病院)
- 診療所・開業医
- 大学院進学・研究職
- 行政(厚生労働省の医系技官・保健所など)
- 企業(製薬会社・医療系ベンチャー・産業医など)
臨床以外の道もありますが、選択肢を残すためにも、医師免許は取っておいた方がいいと私は考えています。医者にならない道については、別の記事で詳しく解説しています。
医学部卒業後のよくある質問
Q. 卒業すればすぐ医者になれる?
A. いいえ。卒業後に医師国家試験に合格して、医師免許を取る必要があります。さらに、診療に従事するには、2年以上の臨床研修が必要です。
Q. 国家試験に落ちたらどうなる?
A. 翌年に再受験できます。ただし、第120回の受験者全体から新卒者を除いた「既卒者」で計算すると、受験者775人のうち合格者は423人で、合格率は約54.6%です(公表値からの計算値)。新卒の94.7%と比べると、再受験はかなり厳しいことがわかります。
Q. 研修先は自分で選べる?
A. 希望順位を登録して、マッチングで決まります。令和7年度は、希望順位を登録した人の約92%が内定しました。ただし、希望どおりになるとは限りません。
詳しい仕組みは、マッチングの解説記事(時期・仕組み・登録)をご覧ください。
Q. 地域枠も同じ流れ?
A. 基本的な流れは同じですが、研修先や勤務先が地域の指定を受けることがあります。契約内容は必ず確認してください。
まとめ:国試→免許→マッチング→研修医
- 医学部卒業後の基本の流れは、国家試験合格→医師免許取得→2年間の初期研修→専攻医(専門研修)
- 医学生の就活は「マッチング」。令和7年度の内定率は92.3%で、結果は10月下旬に出る
- マッチングで大切なのは、CBTの成績・病院の採用試験・面接(私の場合、英語資格は影響なし)
- 卒業前後にやることは、卒業試験・国家試験・医師免許の申請・研修先の手続き
- 第120回国試の合格率は91.6%(新卒94.7%)。不合格になる人もいる
- 就職先は、医師の約95%が病院・診療所。研究・行政・企業などの道もある
- 研修医は、上の先生や仲間に支えられて働ける。安心して失敗できる環境がある
医学部卒業後の流れは長く感じますが、一つずつ進めば大丈夫です。この記事が、これからの進路を考える医学生・受験生の参考になればうれしいです。



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