「研修病院って、何を基準に選べばいいの?」「ハイパーとハイポ、どっちがいい?」「給料はどれくらい違う?」「人気の病院を選べば間違いない?」——マッチングを前にした医学生のみなさんは、研修病院の選び方・決め方でこんなふうに悩んでいるのではないでしょうか。
結論から言うと、研修病院の決め方は「自分が何を重視するか」に優先順位をつけて、病院見学で確かめることです。チェックしたいのは、救急の規模(ハイパーかハイポか)、研修医の人数と雰囲気、指導体制、志望科、給料と働きやすさ、地域などです。人気の病院や、誰かのおすすめの病院が、自分に合うとは限りません。
この記事では、前半で一般的な研修病院の選び方・決め方(手順・チェックポイント・ハイパーとハイポ・給料・人気・タイプ別のおすすめ・マッチング)を解説します。後半では、地方国公立医学部を卒業し、現在は地方の市中病院で研修医1年目として働いている私が、実際に研修病院を選んだ決め手と、研修医になってわかった「本当に大事なこと」を紹介します。

研修病院選びは、2年間住む「家選び」に似ています。駅近(人気)、広さ(症例数)、家賃(給料)…全部そろった物件はなかなかありません。何を優先するかが勝負です!
研修病院の選び方・決め方の手順
まずは、研修病院の決め方の全体の流れです。
- 将来なりたい医師像や、興味のある診療科をざっくり考える
- 研修病院に求めることに、優先順位をつける(次の章のチェックポイントを参考に)
- 4年生のうちに、気になる病院を10〜20か所ピックアップする
- 5年生の病院見学で、5〜10か所くらいに絞る
- 同じ項目で病院を比べる表を作る
- 受ける病院を決め、6年生は受ける病院に通う
- マッチングの希望順位を、本当に行きたい順に登録する
研修病院の選び方のチェックポイント
研修病院を比べるときのチェックポイントを、表にまとめます。全部を満点にする必要はありません。自分にとって大事な項目に、優先順位をつけて使ってください。
| チェックポイント | 確認すること |
|---|---|
| 救急の規模 | 二次救急か三次救急か、救急車の台数、研修医の関わり方(ハイパーかハイポか) |
| 研修医 | 人数、雰囲気、男女比、出身大学、上級医に質問しやすいか |
| 指導体制 | マンツーマン型か屋根瓦式か、勉強会の頻度と内容 |
| 診療科・プログラム | 志望科があるか、選択研修の期間、提携先の病院 |
| 給料・福利厚生 | 年収(額面)、住宅補助・寮、手当 |
| 勤務・休み | 当直制か3交代制か、当直の回数、当直明けに帰れる時間、有給の日数と取りやすさ |
| 地域・生活 | 住みやすさ、実家や将来働きたい地域との距離 |
| 病院の種類 | 大学病院か市中病院か、初期研修後に残る人の割合 |
研修医の人数と雰囲気
2年間、毎日いっしょに働くのは、同期や先輩の研修医です。研修医の人数が少なすぎる病院は、合わない人がいたときに逃げ場がありません。逆に、人数が多すぎると症例の取り合いにならないかも気になるところです。見学で、研修医どうしの雰囲気や、上級医に質問しやすいかを見ておきましょう。
指導体制:マンツーマン型か屋根瓦式か
- マンツーマン型:指導医が1対1で見てくれる。専門的なことまで学べるが、上級医は忙しいので、つきっきりの時間は短いこともある
- 屋根瓦式:1つ上の研修医が下の研修医に教える。教える側にもなるので、アウトプットの機会が多い
どちらがいいかは人それぞれです。自分に合う形かどうかを、見学で研修医の先生に聞いてみましょう。
志望科と2年目の選択研修
将来進みたい科が決まっているなら、その診療科がある病院か、しっかり研修できる体制があるかを確認しましょう。2年目の選択研修で、志望科を長く回れるかどうかも大事なポイントです。決まっていない人は、幅広い科がそろっていて、選択研修の自由度が高い病院を選ぶと安心です。
大学病院か市中病院か
令和7年度のマッチングでは、マッチした人のうち市中病院などの臨床研修病院が64.8%、大学病院が35.2%でした。約3人に2人が、市中病院で研修していることになります。
| 市中病院 | 大学病院 | |
|---|---|---|
| 症例 | コモンな病気(よくある病気)が多い | 珍しい病気や専門的な医療が多い |
| 研修医の役割 | 実践的で、任せてもらえることが多い傾向 | 専門的な医療を間近で学べる |
| 給料 | 大学病院より高い傾向 | 市中病院より低めの傾向 |
| その他 | 病院ごとの個性が大きい | 大学や医局とのつながりができる |
どちらが正解ということはありません。自分が何を重視するかで選ぶのがよいと思います。
研修病院はハイパーとハイポどっちがいい?
ハイパー病院・ハイポ病院とは
研修医や医学生のあいだでは、研修病院を「ハイパー」「ハイポ」とよく言い表します。
- ハイパー病院:救急車が多く、忙しくて、経験できる症例が多い病院
- ハイポ病院:比較的ゆったりしていて、自分の時間がとりやすい病院
正式な基準があるわけではありませんが、参考程度の目安として、救急車が1日20台くらい来るとハイパー、10台以下だとハイポと言われることもあります。また、その病院が二次救急か三次救急かによっても、来る症例は大きく変わります。
ハイパー病院のメリット・注意点
- メリット:症例が多く、早く成長できる。手技や救急の経験を積みやすい
- 注意点:忙しく、体力的・精神的にきついこともある。ハイパーすぎると自分が潰れてしまうことも
- 注意点:重症の症例が来ても、研修医が手を出せるかは病院による
ハイポ病院のメリット・注意点
- メリット:自分の時間がとりやすく、勉強や趣味、生活と両立しやすい
- メリット:一つひとつの症例に、じっくり向き合える
- 注意点:経験できる症例や手技が少なくなることがある。自分から積極的に動く必要がある
結論:自分が潰れない範囲で、経験を積める病院を
ハイパーとハイポのどちらがいいかは、自分の体力・性格・目指す医師像で決まります。たくさん経験して早く成長したいならハイパー寄り、生活とのバランスを大事にしたいならハイポ寄りが向いています。

ハイパー病院は「激辛ラーメン」、ハイポ病院は「やさしい味のうどん」。激辛で鍛えたい人もいれば、毎日食べるならうどんがいい人もいます。自分の胃袋(体力)と相談しましょう!
研修病院の給料はどれくらい?
給料は病院によって差がある
研修病院の給料は、病院によってかなり差があります。一般的に、大学病院より市中病院のほうが給料は高い傾向があると言われています。
また、臨床研修中は、原則としてほかの病院でアルバイトの診療をすることができません。研修病院からの給料が、そのまま2年間の収入になると考えておきましょう。
給料は額面だけで判断しない
ただし、給料は額面だけで比べないことが大切です。次のような点も合わせて確認しましょう。
- 給料の内訳(基本給・当直手当・残業代・賞与)
- 当直の回数によって、年収がどれくらい変わるか
- 住宅補助や寮があるか(家賃の負担は意外と大きい)
- 有給の日数と、当直明けの休みの扱い
- 2年目に給料が上がるか
給料のことは、病院の募集要項で確認したうえで、見学のときに研修医の先生にこっそり聞くのがおすすめです。
人気の研修病院の見分け方と注意点
人気の研修病院の調べ方
- マッチングの中間公表:各プログラムを第1希望にしている人数がわかる。定員より多ければ人気が高い
- 毎年フルマッチ(定員が埋まる)か:過去のマッチング結果で確認できる
- 見学者の多さ:見学の予約がとりにくい病院は人気が高い
- 先輩や研修医の口コミ
人気病院=自分に合う病院ではない
人気の研修病院には、それなりの理由があります。でも、人気やブランドだけで選ぶと、自分に合わないことがあるので注意が必要です。合う人には最高の環境でも、合わない人にはつらい2年間になるかもしれません。
また、人気病院は倍率が高く、第1希望にしても落ちることがあります。人気病院を受けるなら、ほかにも受ける病院を用意しておくのが安全です。
タイプ別:こんな人にはこんな研修病院がおすすめ
「おすすめの研修病院はどこ?」と聞かれることがありますが、万人におすすめの病院はありません。かわりに、タイプ別にどんな病院が向いているかをまとめます。
| こんな人 | おすすめの研修病院のタイプ | 注意点 |
|---|---|---|
| 2年間でたくさん経験して早く成長したい | 症例数が多い(ハイパー寄り)病院 | 忙しい。経験できる量は自分次第 |
| 教わりながら着実に学びたい | 指導体制が整っている病院(勉強会が多い、屋根瓦式など) | 勉強会と症例経験のバランスも大事 |
| 何でも診られる医師になりたい | プライマリケア・総合診療を重視する病院 | 専門的な知識は身につきにくいことも |
| 自分で考えて動きたい | 研修医の裁量が大きい病院 | 裁量は自分で勝ち取るもの。教えてもらえない環境のことも |
| やりたいことが具体的に決まっている | 少人数(少数精鋭)の病院 | 同期に相談しにくい。一人の負担が大きいことも |
| 同期と支え合いながら働きたい | 研修医の人数が多い病院 | 症例の取り合いにならないか確認 |
| 研修と生活を両立したい | ハイポ寄りの病院、住みやすい地域の病院 | 自分から動かないと経験が少なくなる |
マッチングで研修病院を決めるときのポイント
- 希望順位は、本当に行きたい順に登録する(人気を見て順位を入れかえても、マッチしやすくはならない)
- マッチしたら辞退できないので、行きたくない病院は登録しない
- 不安なときは、順位を変えるのではなく、登録する病院の数を増やす
- 受ける病院は、できれば6年生になる前に決めておく
【体験談】私が研修病院を選んだ決め手4つ
ここからは、私が実際にどうやって研修病院を決めたかを紹介します。私の研修先は、地方都市にある約600床・二次救急の市中病院で、初期研修医は20人程度です。毎年フルマッチで、第1希望にしていても落ちる人がいるくらいの、中くらいの人気の病院でした。
- 研修医の雰囲気・人数
- 救急・症例のバランス(ハイパーすぎず、ハイポすぎない)
- 給料・待遇
- 地域・生活環境
①研修医の雰囲気・人数
病院見学で一番重視したのが、研修医の雰囲気です。研修医の人数が少なすぎる病院は避けたかったので、人数もしっかり見ました。今の病院は研修医が20人程度と多めで、同期や先輩に相談しやすいのが心強いです。
②救急・症例のバランス
救急車がひっきりなしに来る「ハイパー」すぎる病院だと、自分が潰れてしまわないか心配でした。一方で、ゆったりしすぎた「ハイポ」の病院だと、経験できる症例が少なくなります。今の病院は、私の感覚ではハイパーとハイポの中間で、ちょうどいいと感じています。
③給料・待遇
私の研修先の給料は、年収でおよそ600万円前後です。大学病院より給料がよかったことも、市中病院を選んだ理由のひとつでした。
ほかにも、市中病院を選んだのは、実践的でいろいろとやらせてもらえそうだったこと、コモンな病気の症例が多いと思ったことが理由です。
④地域・生活環境
2年間暮らす場所なので、住みやすさや、将来働きたい地域かどうかも考えました。研修はハードな日もあるので、休みの日にリフレッシュできる環境かどうかは、意外と大事です。
研修担当の先生に言われた「結局は自分次第」
病院見学のとき、ある病院の研修担当の先生に「この病院で研修すると、どんな医師になれますか?」と聞いたことがあります。返ってきたのは、「一般的な研修病院なら、基本的にできるようになることはほぼ同じ。どんな医師になれるかは、その病院で何をするか次第。結局は自分次第」という答えでした。
病院選びは大事ですが、「どの病院が一番いいか」より「自分がその病院で何をしたいか」を考えることが、後悔しない決め方だと思います。

私の病院選びは、いわば「ちょうどいい」探しでした。忙しすぎず、ヒマすぎず、同期は多め、お給料もそこそこ。研修医版の「中庸の美徳」です(笑)
【体験談】研修医になってわかった!病院選びで本当に大事なこと
実際に研修医として働いてみて、「病院選びのときにもっと気にすればよかった」「これは大事だった」と感じたことを紹介します。病院見学ではなかなか見えない部分なので、ぜひ研修医の先生に質問してみてください。
二次救急か三次救急かで、来る症例が違う
まず大きいのが、その病院が二次救急か三次救急かです。三次救急の病院には、CPA(心肺停止)などの重症の患者さんも運ばれてきます。
ただし、重症の症例が来る病院でも、研修医が手を出させてもらえるかどうかは病院によるのが注意点です。「重症の症例を見たいのか」「実際に自分でやりたいのか」を考えて、見学で研修医がどこまで関わっているかを確かめましょう。
目指す診療科があるか
将来進みたい科があるなら、自分の目指す診療科がある病院かは、研修医になってみて改めて大事なポイントだと感じています。
当直明けは何時に帰れる?休みになる?
これは、働き出してから違いを思い知ったポイントです。当直明けの扱いは、病院によって本当にさまざまです。
- 当直明けは朝に帰れる病院
- 当直明けでも昼まで残らないといけない病院
- 当直明けの休みに、有給を使わないといけない病院
特に最後のパターンは、ちょっと嫌ですよね。有給は本来、自分が使いたいときに使うものです。当直明けのたびに有給が減っていくと、本当に休みたいときに休めなくなってしまいます。
有給の数と取りやすさ
有給休暇の日数も、病院によって全然違います。日数だけでなく、実際に取りやすい雰囲気かどうかも確認しておきましょう。こればかりは、研修医の先生に直接聞くのが一番です。
当直制か、3交代制か
救急の勤務の形も、病院によって違います。夜に当直をする病院もあれば、当直がなく、日勤・準夜・深夜の3交代制で救急を回す病院もあります。生活リズムや体への負担が大きく変わるので、どちらの形かは確認しておきたいところです。
研修医になって思うのは、給料の額面だけで判断しないことの大切さです。当直明けに帰れるか、有給がどれだけあって取りやすいか、勤務の形はどうかまで含めて、「働きやすさ」を比べましょう。

医学生のころは「当直明け」の重みがわかりませんでした。でも研修医になると、当直明けに朝帰れるかどうかは、遠足の次の日が休みかどうかくらい大問題です。
研修病院の選び方に関するよくある質問
Q. 研修病院は何を一番重視して選ぶべき?
A. 人によって違いますが、迷ったら研修医の雰囲気を一番にするのがおすすめです。2年間、毎日いっしょに働く人たちとの相性は、研修の満足度を大きく左右します。
Q. 志望科が決まっていなくても大丈夫?
A. 大丈夫です。初期研修は、いろいろな科を回りながら将来の科を考える期間でもあります。決まっていない人は、幅広い科がそろっていて、2年目の選択研修の自由度が高い病院を選ぶと安心です。
Q. 給料で研修病院を選ぶのはアリ?
A. アリだと思います。私も給料を決め手のひとつにしました。ただし、額面だけでなく、当直明けの扱いや有給、住宅補助まで含めて比べましょう。
Q. 地元の病院と都市部の病院、どっちがいい?
A. 将来どこで働きたいか、どんな生活をしたいかで決めましょう。都市部の病院は人気が高く倍率も高めです。地元や地方の病院にも、研修医が多く、症例も豊富な病院はたくさんあります。
まとめ:研修病院は「自分の優先順位」で選ぶ
- 研修病院の決め方は、重視することに優先順位をつけて、病院見学で確かめること
- チェックポイントは、救急の規模、研修医、指導体制、志望科、給料と福利厚生、勤務と休み、地域、病院の種類
- ハイパーかハイポかは、自分が潰れない範囲で経験を積めるかで選ぶ
- 給料は病院で差がある。額面だけで判断しない
- 人気病院=自分に合う病院ではない。人気は中間公表やフルマッチかで調べられる
- マッチングの希望順位は、本当に行きたい順に登録する
- 私の決め手は、研修医の雰囲気・人数、救急と症例のバランス、給料(年収600万円前後)、地域・生活環境の4つ
- 研修医になってわかった大事なこと:二次救急か三次救急か、志望科、当直明けの帰宅時間、有給の数と取りやすさ、当直制か3交代制か
研修病院選びに、全員にとっての正解はありません。でも、自分の優先順位がはっきりしていれば、後悔しない選択ができるはずです。この記事が、研修病院の選び方に悩む医学生の参考になればうれしいです。

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