医学部を受験しようと考えている人の中には、地域枠での受験を考えている人もいるでしょう。
地域枠による医学部受験は、
- 在学中に返済不要の奨学金がもらえる
- 医学部入学の学力的ハードルが低くなる
と大きなメリットもありますが、それ相応のデメリットも存在します。
「卒業後にその地域で働かなければならなくなるだけで、ほとんどメリットしかないんじゃないか!?」
このように、野菜を摂りたいからもやしがいっぱいのっている二郎系ラーメンを食べるのと同じくらい短絡的に考えて地域枠で医学部に入学すると、後悔することにもなりかねません。
当記事では、
- 医学部に地域枠で入学した場合にどうして後悔するのか
- どうして地域枠での受験はやめたほうはいいと言われるのか
- 地域枠受験の闇・実態
について現役医学生の立場から説明しました。
実際に医学部に地域枠で入学してしまって後悔している人の声も参考にしています。
医学部の地域枠受験を考えている人は、地域枠の問題点をきちんと知った上で地域枠で受験するのかどうか決めるようにしましょう。
また、
- そもそも医学部の地域枠とは何なのか
- 医学部を地域枠で受験するメリット・デメリット
については次の記事で説明しています。気になる人はぜひご覧ください。
医学部の地域枠は後悔する?やめたほうがいい?
医学部の地域枠受験は、必要な学力・偏差値が基本的には低くなるので、受験生にとってはかなりメリットが大きいように思えます。しかし、実際にはメリットと同じくらい、あるいはそれ以上のデメリットが存在します。
ここでは、医学部に地域枠で入学すると後悔する原因、医学部の地域枠受験はやめたほうがいいと言われる理由について説明します。
医学部に地域枠で入学すると後悔する原因は次の通りです。
- 医学部卒業後のキャリアに縛り
- 地域枠の離脱・辞退は難しい
- 地域枠で受験するか受験時に決めなければならない
次で詳しく説明していきます。
医学部卒業後のキャリアに縛り
まず医学部を地域枠入学した場合に後悔する最大の原因が大学卒業後に縛りがあるためです。
卒業後に縛りとは、卒後9年間(大学によっては卒業後の6~11年間)は入学した大学の都道府県が指定する地域で働かなければならないというものです。在学中に他の分野に興味を持ったり都会に出たいと思ったりしても、基本的には入学時の約束を守らなければならなくなります。
また、大学によっては診療科に縛りがある場合もあります。救急や小児科、産婦人科、総合診療科のみと、働ける診療科を制限されている場合もあるので注意が必要です。
このように卒業後のキャリアを制限されてしまうことが地域枠で入学する最大のデメリットであり、後悔する最大の要因でもあります。
地域枠の離脱・辞退は難しい
地域枠で入学した後に地域枠の制約が煩わしいと感じたら、医師免許取得後に借りていた奨学金を返済して地域枠を離脱・辞退すれば良いと考えている人もいます。(奨学金に10%の利子が付く上、一括返済を求められるのでかなり厳しいですが、)
しかし、地域枠を離脱・辞退して一般の医師と同じように働くというのは想像以上に難しいです。
その理由は以下の2つの理由があるためです。
- 就職できる病院が絞られる
- 専門医が取得できない
就職できる病院が絞られる
まず、地域枠の制約を無視して離脱・辞退した場合には、就職できる病院が絞られます。
この理由は、元地域枠離脱者を雇った病院は厚労省からの補助金を減額されるためです。そのため、厚労省から補助金を受ける対象となっているような大病院への就職は困難と言わざるを得ないでしょう。
専門医が取得できない
さらに、地域枠の制約を無視して離脱・辞退した場合には、他の地域で専門研修を受けても「専門医」の資格を取得することができません。
2023年現在、医師のキャリア形成は新専門医制度に基づいています。この制度の下では次のように医師のキャリアは進んでいきます。
医師国家試験合格後、約2年間は基本的な診療知識やスキルを磨く初期研修に入ります。その後、多くの医師は自身の自身の専門領域を決めてそのまま専門研修へと進みます。専門研修へと進んだ医師は専攻医と呼ばれ、ここでは特定の診療知識やスキルなど専門的かつ実践的な内容を学びます。専攻医が研修プログラムに合格すると専門医を取得できるのです。この専門医を取得することで、給与や待遇が上がったり、就職や転職、開業などキャリアアップしていく上で有利となったりします。
新専門医制度が始まった現在、専門医を取得する医師は今後どんどん増えていくと考えられます。
地域枠離脱者にとって専門医を取得できないのは大きなデメリットとなるかもしれません。
地域枠で受験するか受験時に決めなければならない
ここまでで挙げた
- 医学部卒業後のキャリアに縛り
- 地域枠の離脱・辞退は難しい
以上2つのことが地域枠で入学したことを後悔する大きな理由だと言えるのは、地域枠で受験するかどうかは受験時に決めなければならないからです。
社会に出たこともなく、勉強や部活しかしてこなかった学生にとって、卒後の縛りや離脱者の待遇に関するデメリットを聞いてもそれほど大きなデメリットとして考えられないでしょう。
しかし、実際には、在学中に医療以外の想定外の分野に興味を持ったり、憧れの教授・先生と出会って入学時とは180°気持ちが変化したりすることは往々にしてあります。「都会の有名病院に就職したい」「臨床医ではなく研究医になりたい」「美容外科や放射線科にいきたい」「在学中に付き合った恋人と同じ研修先を選びたい」と思うことだってあるでしょう。
しかし、地域枠で入学したからという理由でそれを諦めなければならなくなる場合もあるのです。
実際、こういった心境の変化から地域枠で入学したことを後悔している医学生も一定数います。
社会を経験していない学生にとって大学卒業後の未来を判断するは難しいでしょう。その無知に漬け込んで地域枠という制度によって若者を縛り付けることから、地域枠を人身売買と揶揄する人もいます。
医学部の地域枠受験を考えている人は、このような地域枠の闇・実態を踏まえた上で、
- 自分が受験しようとしている大学の縛りを受け入れられるか
- もし在学中に気持ちの変化があったとしても諦められるか
ということをきちんと考えるようにしましょう。
まとめ
医学部に地域枠で入学すると後悔する原因は次の通り。
- 医学部卒業後の勤務先や診療科が制限される
- 地域枠を離脱・辞退すると、利子が10%もついた奨学金を一括返済させられるだけでなく、専門医が取得できなかったり、就職できる病院が絞られたりする
- 地域枠で受験するかは受験時に決めなければならない
医学部の地域枠受験はメリットの大きい受験方法ですが、無視できない大きなデメリットもあります。
医学部受験を考えている受験生は、地域枠の実態・闇を踏まえた上で、地域枠で受験するのか、それとも地域枠での受験はやめて一般で受けるのか決めるようにしましょう。
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